滋賀県隊友会

自衛隊幹部は高学歴者で無いと駄目なのか?自衛隊の幹部教育は不十分なのか?

先頃、こんな記事を見つけました。

記事の内容はこのサイトをご覧ください。 ⇒ https://president.jp/articles/-/26144

以下元低学歴幹部自衛官の反論?です。

まずこの方は自衛隊という組織をどれだけ理解認識されているのか?

確かに幹部(将校)は下士官・兵(自衛隊では曹・士と呼称)の上に立って統率する立場であるからこれら部下より何事においても優れていなければならないことは当然で有る。しかしながら幹部自衛官と云えども最下位の3尉から最上位の将まで8階級(将は3つ星と4つ星が有るので実際は9段階)に別れそれぞれの階層において求められる地位役割は当然ながら異なる。高学歴者(防衛大学出身、一部一般大学出身者含む)が主力の高級幹部は部隊以上の組織を束ねる役割からしてこの筆者のおっしゃる溢れんばかりの?知性と教養を保有し判断力に優れた人物が選ばれる。逆に部隊レベル以下の組織にあって上級幹部の指揮・指導の下に現場の曹・士を束ね行動させて任務を達成する役割を担うのは1尉以下の幹部である。部隊規模を例にすれば、有事になれば配置も変わるであろうが、現状(平時)では統幕をはじめとする上級司令部、各種自衛隊の学校等教官、研究職、自衛隊の各機関等に上級幹部の多くが配置されていることからも、部隊における高学歴幹部の配置は少なく、普通科連隊を例にすれば連隊長、幕僚の半数、中隊長の半数程度が高学歴者で幕僚・中隊長の半数や小隊長クラスの大半は筆者の言われる低能力・低学歴の3佐以下の部内選抜幹部が担っているのが現実であり、逆にそうでないと部隊は機能発揮できないとも言える。もちろん将来上級幹部になることが半ば約束されている高学歴出身幹部は経験上初級幹部時代に部隊配置されるがいつまでも初級幹部として部隊勤務するわけでは無く、早ければ部隊配置間もなく3尉時代に国内外留学する者も居るし、高学歴者で上級幹部になって以降は普通科連隊クラスだと中隊長と連隊長(いずれも全員なるわけでは無い。)に2年程度補職される程度で後は部隊勤務は一般的に無い者が殆どである。但し、ピラミッド構成の数の論理から中には崩れ落ちる(ざるを得ない。)高学歴幹部があるのは当然で部隊勤務を主として2佐程度で定年を迎える者も存在し、逆に筆者が馬鹿にされている私のような低学歴者でも選抜試験に合格し高学歴者に伍して所定の教育を修了すれば上級幹部に昇進する者も数は少ないが存在するのも又事実である。

私が現役時代に見聞した経験からすると、まず国内部外大学等や外国での留学等(修士課程、博士課程、その他の専門課程、諸外国の軍学校・軍大学などの教育や企業・行政機関研修等)を受講する高学歴者自衛官は官僚や大手企業等とは比較にならないまでも決して少なくは無く、部隊クラスでは彼らの修学間の欠員部分を我々低学歴幹部で埋めていると言えなくもない。幹部自衛官の自衛隊関係教育は陸上自衛隊を例にすれば、「幹部候補生課程(幹部候補生学校6ケ月)」、幹部初級過程(各職種学校6ケ月)、幹部上級課程(各職種学校6ケ月)は高学歴者・低学歴者問わず必須で有り、加えて幹部特技課程等(諸々の専門特技課程、レンジャー、空挺等)も多くのものが学歴問わず履修させられる。これらから上の課程教育は選抜制のもとに指揮幕僚課程(旧陸大相当で幹部学校2年間)、技術高級課程、幹部高級課程、幹部特修課程(1年間)、統合幕僚学校、防衛研究所研修、防衛大学校研究科(博士・修士)などへの入校等の教育受講機会が多く存在し、特に指揮幕僚課程(幹部上級課程修了者で年齢制限有り)は高学歴幹部の上級幹部への登竜門となる課程で高学歴幹部のほぼ全員が受験するため選抜試験は熾烈を極めある者は幹部任官から時を経ずして受験勉強を開始するが1回目で合格する者も有れば数回の受験機会最後に滑り込む者も居て、最終的に失敗に終わった者の多くが幹部特修課程を受験するため高学歴幹部は一般的にいずれかの課程を修了し連隊長クラス以上への昇進の道に近づくのであるが必ずしも全員とはいかないのが先に述べたピラミッドと個人能力差の故で有る。私はれっきとした低学歴部内選抜幹部で幹部候補生課程、幹部初級過程、幹部上級課程、幹部部隊通信課程、幹部対戦誘導弾課程の合計27ケ月の教育受講に加え、一応、平等に門戸は開かれているとは言え、本来は高学歴幹部向けで我々低学歴幹部には縁がないはずの指揮幕僚課程や幹部特修課程の内、晴天の霹靂で幹部特修課程に選抜され更に1年間入校した為、幹部自衛官26年余の間に曹・士時代の各種教育期間を除いても通算39ケ月(3年3ケ月)は学生生活を過ごしたことになり、知性と教養(一般向け?)は身につかないまでも幹部自衛官としてある程度の部隊を束ね又は副連隊長、大隊長、幕僚等として勤務するに必要な知識と能力は身につけさせていただいたと思っていて、「自衛隊幹部が無能無知故に我が国の防衛という崇高な任務を果し得ない。」などと云う門外漢の方の論調には同意納得は致しかねる。ちなみに今回の幹部の教育のみならず、自衛隊は陸上自衛隊の陸士入隊者で陸曹(准尉)で定年を全うする隊員の例をとっても、新隊員教育(前期・後期計6ケ月)、陸曹候補生課程(3ケ月)、初級陸曹特技課程(3ケ月)、中級陸曹課程、上級陸曹課程という必修課程教育の他に、職務に応じる各種の特技教育等が数多く設定されていて、中級陸曹になる前に幹部になった私の場合でも新隊員~3曹時代の10年間にこれらで24ケ月は教育を受けていて自衛官生活36年4ケ月のトータルは63ケ月(5年3ケ月)となり15%弱はなにがしかの教育を受けていたことになり、自衛隊は「人を育てる」そしてその能力を結集して「組織として活動する。」ことによりその実力を遺憾なく発揮できる組織だと確信する。付け加えれば、現在の曹・士の学歴は高学歴者がかなりの割合で存在する̪し、私達の時代でも夜学や通信教育等で高学歴者になり更には一般幹部候補生に合格し中には将にまで昇進した者がいるなど諸外国軍隊の下士官・兵に比して決して捨てたものでは無い。

最後に、組織にはそれぞれの特性があって、その特性を十分に発揮するための人材を核とする組織の有りようは全てが同じで有るはずも無く、公務と民間では共通点が有っても決して同じにはならず、自衛隊・警察・海保等々の公安職域にあって階級制度を取りピラミッド構成の組織を構成するのはその任務達成に最も適した形態に他ならず、ピラミッドの構成には上から下までそれぞれの異なる役割が有り、その役割に応じた能力、適性が求められることは当然で有る。特に自衛隊は個人プレーで任務達成を図るものでは無く、全て組織としてのチームプレーで任務を達成するものであり個人の能力が優れていることは大切だがそれ以上にいかに組織だった行動がとれるかが原点である。よって、私のような低学歴幹部はその下積み経験から部隊及び隊員の内実を熟知し主として中隊規模以下の部隊を束ねるのに適するのでそのための識能向上を図るための教育を受けていて、高学歴幹部は広い視野や教養を生かしそれ以上の組織を束ね、大所高所から全般を捉えた適切な判断を下すことを役割づけられるは自明の理で有り、このことは他国軍隊などにおいても概ね同じであろうと思料する。「根性論で任務達成はできない??」まさに同意、然しながら自衛隊がいつまでも「根性論」だけで組織を維持していたとするならば近年多発する未曾有の大災害に対する災害派遣任務など達成し得ていないであろう。確かに、自衛隊の専門教育以外の一般教養や見識に関する教育はシビリアン官僚に比して少ないかもしれないがまずは国防に関する̪識能を充実させることが重要であろうし、何よりもいかなる状況にあっても沈着冷静に的確な状況判断の基、部下を統率出来る高邁な人格を持つ幹部であることを求めるのが筋であろう。顧みるに警察予備隊から自衛隊に至る今日まで、筆者のおっしゃる自衛隊の知性、教養に関する教育不十分に起因する幹部自衛官の能力不足により、我が国の防衛を始め、国民の皆さんの安心・安全を守る自衛隊の任務を果たし得なかった事例は果たしてあったであろうか?

最後の最後に敢えてもう一度!自衛隊は決して「根性論」で組織を維持しているわけでは無い。「教えかつ上下絆を深くして国民の安全安心のためにという透徹した使命感と徳性をもってともに戦う。」組織なのだ。近年の大規模災害に出動する(幹部・曹士問わず。)の中には自身や家族などが被災したり、長期の訓練演習に参加し疲労困憊で駐屯地に戻り帰宅する間もなく、汚れた衣服を洗う間さえ無くても黙々とそのまま災害派遣に出動するのは当然であり、中には家庭事情等が有り駐屯地残留業務を命じられてもこの配慮に反発し出動を志願する者も多い。決して無理やりでは無く「国民の安全安心を守るのが自衛隊(官)の任務であり、我々が最後の砦」との「使命感」を堅持しているからこそである。自己犠牲をいとわない透徹した「徳性」はことに臨んであれこれ理論を振り回し自己犠牲を避けようとする「知性」に優ると確信する。